「摩天楼を夢見て」



1992年 アメリカ映画

監督:ジェームズ・フォーリー

出演:アル・パチーノ、ジャック・レモン、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス

デヴィッド・マメットによるピューリッツァー賞受賞の戯曲を名監督、ジェームズ・フォーリーが映画化。N.Y.の不動産屋を舞台に、セールスマン同士の意地のぶつかり合い、策謀と事件、心意気を描いていく。


摩天楼を夢みて [DVD]



知る人ぞ知る名画です。
ジャック・レモン、エド・ハリス、アル・パチーノ、ケビン・スペイシー、そしてアレック・ボールドウィンという、ハリウッドのいずれ劣らぬ実力者による厳しいビジネスの世界を描いた映画です。
秀逸な音楽はJ.N.ハワード。06年でしたか、亡くなった名優ジャック・レモンの代表作と呼んでも差し支えないでしょう。

舞台は激しい雨の降る夜のマンハッタン。
ウダツの上がらない不動産会社セールスマン達に、本社から来たイヤなエリート営業マン(アレック・ボールドウィン)から人格無視の残酷な檄が飛ばされ、なおかつ過酷なノルマが与えられます。
ジャック・レモンやエド・ハリス、アル・パチーノら営業マンは懊悩しながら、ある人はヤケになり、ある人は自分のやり方でノルマ達成に向けて動きます。
私など本来は営業マンですので、この辺りの営業の辛さを分かり過ぎるほど分かってしまい、涙してしまいそうになります。
売れてナンボの営業マンは売上が無いと人間扱いされません。
この映画を観ればその事実を誰もが理解出来るでしょうね。
しかし、窮鼠猫を噛むの例え通り、追い詰められた営業マンは無理をしてしまう訳です。
その無理が取り返しの付かない違法行為であった場合、えらいことになってしまいます。
本作は、栄光を掴もうとして道を踏み外してしまう老営業マンの哀れな姿を、J.N.ハワードのムーディなサウンドとともに浮き彫りにした作品です。

それにしても、これだけの名優陣が揃って、殆ど動きの無いセリフばかりの舞台みたいな映画を作るなんて凄い話ではありますね。あまり例を見ません。
特に、当時この中では最も知名度の低かったであろう、ケビン・スペイシーの演技は好きですね。
これでもかと罵声を浴びせられながらクールな演技に徹しています。
また、個人的にはやはりアレック・ボールドウィンの嫌われエリートっぷりが堂に入ってていいですね。
アレック扮するエリートが苛烈な檄を飛ばすシーンは今でもセリフを覚えるほどよく観ます。ほんの10分程度なんですが、何度観ても身が引き締まります。
あ、女性には本作の良さが理解出来ない可能性大です。
これは戦う男のストーリーです。


ジャック・レモン(出演)
1954年に映画デビューを果たし1955年の「ミスタア・ロバーツ」でアカデミー助演男優賞を受賞し、1973年の「セイヴ・ザ・タイガー」でアカデミー主演男優賞を受賞し、主演、助演を獲得した最初の俳優となった。
コメディーな役を演じる事が多かったが、現代人の持つ性格的ひ弱さを演じては右に出るものはいないとまで言われる。