「モブスターズ」



1991年 アメリカ映画

監督 マイケル・カーベルニコフ

出演 
クリスチャン・スレイター、パトリック・デンプシー、リチャード・グリエコ、コスタス・マンディロア


禁酒法時代のN.Y.で頭角を現わしてきた4人の若者、彼らはいつしか全米に名を轟かせる大物ギャングとなってゆく。ニューヨーク・ギャングの生き様と男の美学を描く作品。


モブスターズ/青春の群像 [DVD]




クリスチャン・スレイター主演。個人的に、このクリスチャンが好きなもので何の気無しに観た映画だったのですが、これで私はマフィア映画にハマることになってしまいました。

現在私達がマフィアと呼ぶ組織は、実はもっと複雑な成り立ちでして、まず「マフィア」はシシリー島出身者だけがボス=ドンになれる組織です。マフィアに対してナポリを中心とする南イタリアに巣食う犯罪組織を「カモッラ」と呼びます。
また、本来シシリー島出身者による犯罪組織は「マーノ・ネーラ」と呼ばれたのですが、それを「コーサ・ノストラ」に代えたのがチャーリー・”ラッキー”・ルチアーノ(本名:サルヴァトーレ・ルカーニア)です。
通称ラッキー・ルチアーノは、それまでのシシリー島出身者に拘ったマーノ・ネーラ支配者とは違い、ユダヤ人なども優秀であれば重用しました。それが彼の右腕となったマイヤー・ランスキーであり、ベンジャミン・”バグジー”・シーゲルであり、同盟を組んだダッチ・シュルツもその亜流にあたるかも知れません。
ルチアーノはそれまでのドンによる絶対権力+中央集権的組織から委員会(コミッション)による合議制組織へと改革を実行しました。ルチアーノはやがて、トーマス・デューイにより収監されますがマイヤーやフランク・コステロを獄中まで面会に呼んで院政を揮いました。
第二次世界大戦でドイツ軍のUボートに対抗するためアメリカ軍がNY湾岸警備やシシリー島上陸作戦に関して獄中のルチアーノに接近し、そこで取引がなされ、ルチアーノはシシリー島に帰還してシシリーの顔役と組んで製菓工場を設立、菓子の中に麻薬を入れて輸出して大きな利益を生み出しました。
つまり、アメリカ政府自身がルチアーノと取引した結果、マフィアの犯罪が世界に流れていった訳です。
それは当然、現在でも続いていますので、マフィア(コーサ・ノストラ)を創り発展させ、同時に犯罪を世界中に輸出した人間として、チャーリー・”ラッキー”・ルチアーノは歴史にその名を残しています。

上述の通り、ラッキー・ルチアーノこそが現在のマフィア=コーサ・ノストラを作った訳ですが、本作はそのラッキー・ルチアーノとフランク・コステロ、マイヤー・ランスキー、そしてバグジー・シーゲルの4人に焦点を当てて青春群像映画的に描写しています。ルチアーノが成り上がるきっかけとなった、ジュゼッペ・マッセリア(カモッラ)とサルヴァトーレ・マランツァーノ(マーノ・ネーラ)によるカステランマーレ戦争でマッセリアの側についたと見せてマッセリアを暗殺し、いったん戦争にはマランツァーノを勝利させて、次にこれまたマランツァーノをも暗殺、遂にNY5大ファミリーのドンになる栄光と裏切りと殺戮の歴史を舐めるように軽く描いています。マフィアを少々美化している作風には疑問も沸きますし、荒唐無稽なウソも散見されますが、史実を忠実になぞっている点は評価していいでしょう。
マフィア映画入門には打ってつけですよ。